インドネシア・タブアカン村でメンテナンスをして来ました。
 
 
2005年10月、インドネシア・タブアカン地区で、インドネシアNGOが設置したSHS(家庭用小型太陽光発電システム)の、メンテナンスを行って来ました。その概要報告です。詳細は、ソーラーネット通信7号をご覧下さい。

*2005年4月、ECI(インドネシア・マカッサルのNGO)に、タブアカンでのSHS(家庭用小型太陽光発電システム)の現状に関する具体的な資料づくりを依頼しました。その結果、導入軒数55件の内、コントローラの不調41、点灯用インバータ75などの実態を正確に把握できました(6/3)。また、システムが正常に戻れば、住民達も使用料を支払う意志のあることもある程度、解りました。
*これにもとづき、秋でのメンテナンス事業を計画し、ECIには引き続き、事前の現地との調整を担当してもらいました。
*9/27から10/7日まで、日本人3名+通訳1名、現地NGO2名、および地元技術者(L.T)3名とで、修理交換を行いました。合わせて、L.Tへの講習も行いました。
*訪問した軒数は38軒、コントローラの交換: 25台、バラスト交換数 : 22台などです。残りは、バッテリーが新規に用意された所からL.Tが交換することになっています。
*ECIからのその後の報告によると、当該地区を二つに分けて、代表者が住民からの支払を管理しはじめていること、バッテリーを買い替える者が出て来ています。
 まもなく、住民達の太陽光発電を自主管理するための組合が、立ち上がる予定です。実に楽しみです。

 
  2006年の報告

  A. 組合に関して
 これまで現地では、LPLHのソレマン氏が中心となり、「村全体の経済発展」を主目的とした公的な組合を結成しようとして来ました。その概念はSHSが設置され始めた初期からの目的でもありました。今年の7月2日には組合の設立総会もひらかれて、43名が出席しています。
 我々の当初の訪問目的は、この組合....名前まで決っていました。
Mappakabaji・生活向上組合です....が、どのように動き出しているのかを確認することでした。しかし、公的組合の立ち上げの動きは、その後、止まってしまい、なかなか前に進まなくなっていました。報告では、文字をかけるものがいない、人材が不足していると言うことでした。
 私達の訪問の目的の一つは、進まなくなった理由を知ることに変わりました。
 
 私達が感じ取った理由は、二つありました。
一つは、「生活向上組合」という公的な組織を立ち上げる必要性を、村人はまだ共有していないと言うことです。日本からの昨年の支援が、リーダーたちに「組合を作らなければいけない」という、思いにさせてしまっていたのかも知 れません。
二つ目は、「上の地区」と「下の地区」の交流が、それほど円滑ではないということです。
 この点は、これからイロイロと絡んで来ますので、ちょっと説明しておきます。
 
 これまで「タブアカン」と総称していた対象地域は、実は二つの村にまたがっています。この村は、郡も違う、異なった行政区域です。「下の村」はジェネバト村で、タヒル氏がリ−ダーをつとめています。モスリム中心の古くからの集落です。「上の村」はバランロンポア村で、ポナ氏がキリスト教関係のリーダーです。モスリム今日と途混在している新しい入植者の集落です。
SHSは、はじめ、事業がキリスト教の人的つながりではじまった関係からポナ氏が中心となって、上の地区から設置されて行きました。その後に、下の地区へと広がった経緯があります。
 上と下の集落は、成り立ちも、内部の人間関係のあり方も、かなり異なっています。
リ−ダーであるタヒル氏とポナ氏の個性も考え方も、全く違います。
一つの組織としてまとめあげるには、幾つものハードルをこえる必要があります。

 ソ−ラーネットとしては、新たなSHSの設置支援を始めることのできる絶対の条件として、地元でSHSを管理できる仕組ができることだと考えています。
それは、公的な組合である必要はないと考えます。できるところから積み上げて行って欲しいと考えます。
 今回、私達はハッキリと、地元のリーダーとLPLHのソレマン氏に、この意図を伝えました。
 ソレマン氏とは、以下の点を確認しました。
1.公的な「生活向上組合」の結成は、気が熟すまで急がずに、村人の自主に任せる。
2.自主管理組織は出来つつあるので、引き続き、財務の実務とSHSの技術支援は続ける。

B. 財務上の管理状況について
 今回の訪問で、もっとも確認したかったことは、ユーザーが月決めのお金を支払っているのか、そのお金がきちんと管理されているのか、でした。
 結果は、ハッキリと分かれました。「下の村」は、25人中16人が支払い、残りの人々も、お米が売れたら支払うことになっていました。帳簿も、領収書のやり取りも行われていました。集まったお金で、蛍光管やスイッチを協同購入しています。地元技術者LTへの支払も、行われていました。
 他方、「上の村」の集金状況は、良いと言えるものではありません。支払を行った形跡のあるものが30人中10人、しかも、領収書のやり取りも行われていません。LTへの支払もまだです。
 上記のように、財務の再指導をLPLHに、依頼しました。

 ここで、月決めの支払に付いて、説明しておきます。
 ユ−ザ−は、各グループ管理者にRP.12,500(約180円)を支払います。このうち、RP.10,000は、バッテリー等の交換費用となります。RP.2,500は、LTへの支払となります。実際には月々で支払う人は少なく、何らかの収穫物が売れた時に、まとめて支払うケースがほとんどです。

C. SHSの所有・帰属に関して
 SHSはもともと、日本からの支援を元に、設置されたものです。ユ−ザーは一部頭金と月決めの支払を行っていますが、かかる費用の一部に過ぎません。
事業を進めていたジャワ島のNGOやマカッサルのNGOと、ユ−ザ−たちとの間で、この物たちの所有関係に関した明確な取り決めは、無いままでした。このことが、幾つかのトラブルを産んでいました。
 月決めの支払を住民達が管理することになった今、この帰属関係をはっきりとさせておかないと、後々、あまり面白く無い事態になる可能性があります。目の前に、多額のお金があるのですから。
 今回、この点をはっきりさせました。
1.SHSは、グループ全体の物である。ユ−ザ−の一存で処分することは出来ない。
2.ユ−ザ−は、きちんと管理する責任を持っている。グル−プ管理者は、LTの派遣や情報の提供により、各自が管理できるようにしなければならない。
3.管理できなければ、グル−ブ管理者は管理できるとおもわれる他の者に、SHSを移動することができる。
4.月決めのRP.10,000は、ユーザー個人の積立金であり、バッテリー交換の費用、またはシステムが壊れた時の修繕費に充当する。

 何でこんな基本的なことを....と思われるかも知れませんが、何となく曖昧なまま上手く進んで行く、これがインドネシア流、と言う側面もあります。
「これは誰の物なの?」と聞くと、「何でそんなことをわざわざ聞くのか」と唖然とした顔を見られて、どぎまぎしてしまうことも何回かありましたよ。

D. SHSの管理状況に関して
 今回は、ソレマン氏の事前の調査に基づいて、上手く動いていないシステムを中心に点検修理して来ました。
 ヒュ−ズが切れているだけなのに、コントローラーが壊れたと考えてコントローラーを外してしまった人、バッテリー端子が汚れてしまい、全く充電されていないシステム、配線の接触不良、例によって、バッテリー液が入っていない家....まるでトラブルのショウウィンドウを眺めるようでした。いやーーー、こちらもとても勉強になりましたよ。
 さすがにコントローラーを外してしまう所は少なくなりましたが、やはり何軒かは、外していました。そこのバッテリーは、ほとんど例外なく劣化が進んでいます。コントローラーが付いている家とほとんど同じ頃にバッテリーを新しくしているのに、です。どうして外すのかの問に、帰って来た答えが、最高、でした。「ワールドカップ」です。この国も、中継は、夜だったですね。
 バッテリーの交換は、着々と進んでいます。「下の村」では、25軒中23軒のバッテリーが良好になっています。「上の村」では、30軒中16軒です。
 ここでも、下と上との差が歴然としています。

 こんなことから、簡単なトラブル事例集を用意する予定です。今回見聞きした物を網羅すれば、大半のトラブルにたいしてLTは、対処することができると思われます。いずれも、難しいものではなく実に初歩的な事態です。来年は、それなりに設備の整った場所で、数日LTを缶詰めにして、基礎的な電気講習会を開こうかとか考えています。

付記 
 ジャカルタでのこと
 ジャカルタには、前年度のメンテナンス事業にまとまってインバ−タ−とコントロ−ラーを購入したGAEという会社があります。今回は、来年度の講習会への協力の要請と、一台壊れていたコントローラーの事、新しい太陽電池関連商品の情報を仕入れる目的で訪問しました。新しい商品は、デザインの良い10Wの蛍光灯がありましたが、それほど目新しい物はありませんでした。た
だ、SHSに使われているバッテリーは、マカッサルで手に入る自動車用の50Ahです。これがRp.300,000でした。自動車用のバッテリーは、太陽電池で使用する場合、あまり長持ちしません。GAEで扱われているバッテリーは、EBタイプと言う、太陽電池システムにはうってつけのものです。大きさも65Ahと、丁度良い大きさです。この値段がRp.350,000。さっそく、ソレマン氏に情報を入れておきました。来年の講習会への協力は、快諾してもらえました。